日本の夜の街が、今、大きな変革期を迎えています。
2025年6月28日に施行された改正風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(通称:改正風営適正化法)は、長年の社会問題となっていた悪質なホストクラブの慣行に終止符を打ち、業界全体に透明性とコンプライアンスを求めるものです。

この法律の施行直後である7月31日から8月5日までの期間だけでも、その影響は顕著に現れています。
今回は、この新しい法律が夜の街にどのような変化をもたらしているのか、最新のニュースを交えながらご紹介します。

■「売掛金」回収の厳罰化:全国初の逮捕から続く取り締まり
改正風営適正化法の施行後、最も注目すべきは「売掛金」(未払い料金)の回収を巡る取り締まりの強化です。

法律の施行からわずか数週間後の7月16日には、名古屋のホストクラブ経営者が、女性客の自宅に押し掛け、大声で脅迫した容疑で逮捕されました。

これは、改正法における「売掛金」回収を巡るホストの逮捕としては「全国初」とされており、当局が新規定を厳格に施行する強い意思を示しています 。

さらに、8月4日には熊本でも同様の逮捕がありました。

ホストクラブ従業員が、未払いの飲食代の返済名目で現金を脅し取ろうとした疑いで逮捕され、警察は組織的な犯行の可能性も視野に入れて捜査を進めています。

これらの逮捕は、新法で禁止された「客に注文や料金の支払等をさせる目的での威迫」に直接関連しており 、法執行機関が客を搾取的な債権回収から保護することを最優先していることがうかがえます。   

■変わる広告、変わるビジネスモデル
改正法の大きな柱の一つが、ホストクラブやキャバクラの広告規制です。

警察庁から出された指針により、以下のような表現が禁止されました :   

・「年間売上〇億円突破」「指名数No.1」といった営業成績の直接的な誇示
・「総支配人」「覇者」といった上位を推認させる表現
・「売上バトル」「カネ」といった従業員間の競争を強調する表現
・「○○に溺れろ」「貢げ」といった過度にあおる表現

この規制は、店頭看板だけでなく、SNSや宣伝車両にも適用されます 。実際に、歌舞伎町などの繁華街では、これらの規制に準拠するため、かつて売上高やランキングを表示していた屋外看板の一部が黒く塗りつぶされるといった目に見える変化が起きています。   
これは単なる広告表現の変更にとどまらず、業界のビジネスモデルに根本的な転換を迫るものです。

■その他の法執行と業界への影響
この期間には、他にも以下のような動きがありました。

・無許可営業の取り締まり: 札幌市では8月2日に、パブクラブを無許可で営業し、他人への名義貸しを行った疑いで男女2名が逮捕されました 。無許可営業に対する罰則は大幅に強化されており、法人には最大3億円の罰金が科される可能性があります。   
・スカウトグループによる脅迫: 東京では7月31日に、風俗店から関係を絶つと言われて脅迫したとして、スカウトグループのメンバーと見られる2名が逮捕されました。改正法では、性風俗店による「スカウトバック」(求職者紹介料)も禁止されており、悪質な斡旋行為への監視が強まっています。
・公務員の懲戒処分: 奈良県では7月31日、出張先のホテルで風俗店の女性を盗撮したとして、消防職員が停職処分を受けました。これは個人の不祥事ですが、風俗営業に関連する個人の行動に対する社会全体の目が厳しくなっていることを示しています。   

■今後の夜の街はどうなる?
今回の改正風営法は、「六重の網」とも評される多角的なアプローチで、悪質な営業を封じ込めようとしています。   

・「色恋営業」の禁止(行政処分)
・「売掛金」回収を口実とした売春強要の罰則化(刑事罰)
・「スカウトバック」の全面禁止(罰則)
・無許可営業に対する罰金の大幅引き上げ(法人最大3億円)
・行政処分逃れを許さない欠格事由の拡大
・広告規制の強化

これらの規制により、事業者は料金設定、顧客対応、債権回収、広告など、あらゆる側面で厳格なコンプライアンスが求められます。従業員への包括的な研修や、法律専門家との連携も不可欠となるでしょう。   

「売上競争」から「顧客満足・安全重視」へと大きく舵を切らざるを得ない状況です 。