2025年9月25日、東京地裁はキャバクラの元キャストが店の運営会社に未払い賃金などを求めた訴訟で、キャストの「労働者性」を認め、約2,000万円の支払いを命じる画期的な判決を下しました 。この判決は、ナイトワーク業界における労働問題に新たな転機をもたらすものとして注目されています。   

裁判の争点:「業務委託」か「労働契約」か
訴訟で会社側は、キャストは「業務委託契約」に基づく個人事業主であり、労働基準法は適用されないと主張しました 。これに対し、元キャスト側は、実態は労働契約であり、労働者として保護されるべきだと訴えました 。   

裁判所は、契約書の文言や名目ではなく、その「実質」を重視して判断しました 。判決では、店舗によるキャストへの指揮監督や、勤務時間に対する拘束性が認められたことが「労働者性」を認める根拠となりました 。さらに、業務の指示に対する諾否の自由がなく、報酬が売上と連動しつつも一定の固定額が保障されていた点も、労働者と判断された理由とされています 。   

判決の重要性と業界への影響
この判決は、多くのナイトワーク店舗が長年にわたり採用してきたビジネスモデル、すなわち労働基準法や社会保険の適用を回避するためにキャストを個人事業主として扱う慣行を根底から揺るがすものです。判決は、未払い賃金や深夜割増賃金の支払い義務を認め 、さらには罰金や厚生費、仮受金といった名目で賃金から控除されていた金額を無効と判断しました 。   

今後、同様の訴訟が増加する可能性があり、業界全体に労働環境の抜本的な見直しが求められます 。事業者は、労働時間管理や社会保険料の負担など、労働者雇用に伴うコストと責任を負うことになるため、従来の利益率を維持することが困難になるかもしれません。この判決は、風営法改正の動きと相まって、夜の街の事業者に「法令遵守」と「健全な事業運営」という二重の課題を突きつけていると言えるでしょう。